私と失恋とタリスカーストーム。

 

もう何年も前の話になるが、私はウイスキーのブラインドテイスティングコンテストで、優勝したことがある。
ボトルのラベルを見ずにグラスに注がれたウイスキーの銘柄を当てる大会だ。
といっても、当てられることは皆無と言っていい。
カテゴリー(国や原料)が大体わかれば優勝に近づくことができる。

何故優勝できたのか?
運や体調もあったと思う。ただ、今思えばその日の私は冴えていた。
ピンと来るものがあったと思う。女の勘ってやつだ。

本当のところ、普段の私は相当鈍い。相手の意図が見えないことばかりだ。
道でもよくつまづくし、忘れ物も多い。ハッキリいって不器用なのだ。
しかし数年前のブラインドコンテストの日、その日の私は確実に冴えていた。
とても珍しい日だったのだ。
神がかっていたともいえる。自分を信じて良かったと思う。

よく、チャンスや運はみな平等にあるというが、女の勘が冴える時も女性に平等にあると思う。
その日の私は、それを身を以て体感することとなる。

当時付き合いのあった男性が二股をかけていたのが発覚したのだ。

The young couple with different emotions during conflict on gray background

なんとなく、気付いてはいたが、私は勘の鈍いフリをしていた。
そして、どんどん苦しくなっていったのだ。そんなタイミングで行われた大会。

大会で私が当てた銘柄・・・忘れもしない「タリスカー・ストーム」。

勘の鈍いフリをしていた私は、コンテスト前に日々悶々とした気持ちでタリスカーを飲んでいた。
昔読んだ本に「失恋した心を癒すウイスキー」という説明があったからだ。

その時は、ハッキリと失恋したわけではないけれど、
ストームとつくからにはいつものタリスカー以上に癒し効果があるのだと信じた。
信じて飲み続けた結果、ブラインド大会で優勝できたのだと思う。失恋のおかげだ。

私はその男性に選んでもらえなかったけれど、私の選んだウイスキーは私を優勝へと導いた。
少し皮肉な話だ。女性の勘や運は皆平等なのだと思った。


薬は摂取しすぎると効き目が悪くなるという。
タリスカーにはずいぶん助けてもらったが、少し摂取しすぎたようだ。
次の常備薬を決めておこう。そうだな、次は「宝くじの当たるウイスキー」そんな説明書きのあるウイスキーを探してみるか。

男はもういい。
信じて飲む者は、きっと救われる。

Tomomi

バーテンダー。錦糸町の老舗バー「オールドスコット」に勤務して18年。 2007年の第1回ウイスキープロフェッショナル試験に合格。今一番好きなウイスキーは「アードベッグTEN」。