錦糸町のショットバーにて。- アードベッグと私 –

 

1.「バーボンソーダをジャックダニエルで」
2.「スコッチの水割りをハーパーで下さい」
3.「アイリッシュ下さい。ボウモアみたいな感じで」

さて、上の3つの注文、それぞれ間違いが1つずつあるのだが、皆さんはもうお気付きだろうか?
最近はウイスキーが流行っている。一時のブームでは終わらない。
ハイボールといえば、飲食店に行けば必ずメニューにあるほど定着している。

その分、先の質問のような間違いもおきやすいのだ。

シングルモルト、アイラ、ピート、ライウイスキーなど、、皆たまたま耳にするから意味も曖昧なのに使ってしまうのだ。
ウイスキーがずいぶん有名になった証拠ではあるのだが・・・。

錦糸町という街は不思議な街で、先の1~3の台詞も力づくで通せそうな力がある。
ウイスキーのプロフェショナルとして間違いを正すべきか、細かいことは聞き流すべきか…。
私の場合は後者を選ぶ。理由は、間違いを正したら怒られた経験があるからだ。
正しいことが喜ばれるとは限らないのだ。
日々、ウイスキーの神様への懺悔である。

そして、今日も好きなアードベッグをたくさん飲む。懺悔と称して、たくさん飲む。

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皆さんは、アードベッグというウイスキーを飲んだことはあるだろうか。
アードベッグ蒸留所は1815年に操業を開始し、もう200年以上経つ。
何度もオーナーが変わり80年代は生産しなかったり、困難は多かった。

「1度飲んだら病みつき」
そんな言葉がピッタリのスコッチである。流行のアイラモルトの一つだ。
アイラ島という島は、スコットランドでも南のほうに存在する小さな島。
アイラ島産のウイスキーは独特のクセが何とも言えない。スモーキーなのだ。

もちろんアードベッグもスモーキーだ。しかし、甘みも感じる。
桃を煙で燻したような風味・・・と言いたいところだが、少ししっくりこない。
ピッタリな表現を見つけようとするけど、見つからないのだ。
どんどん飲んでしまう。気付くと朝だ。

困難を乗り越えると、こんなにも美味しいウイスキーに育つのだろうか。
美しいとも言いたくなるこの味。
なんだか、人と同じだな。私はまだまだこんな美しいウイスキーには程遠い。

ウイスキーの銘柄は、世の中に数え切れない程ある。
その中から夢中になれる、ピッタリはまる、そんな1本が見つかるのは、幸せなことだ。

熟成のピークは1樽ごとに違うという。
早すぎても遅すぎてもいけない。
そんなことを思いながら、今日もアードベッグを飲む。


私の熟成のピークはもう過ぎちゃったか…。
いやいやまだこれから。
1樽ごとにピークは違う。人とは違う個性を目指せ。
グラス

Tomomi

バーテンダー。錦糸町の老舗バー「オールドスコット」に勤務して18年。 2007年の第1回ウイスキープロフェッショナル試験に合格。今一番好きなウイスキーは「アードベッグTEN」。