「グレンドロナック(Glendronach)」が銘酒と呼ばれるには、理由がある。積み重ねた過去は、決して消えない。

 

毎日同じ時間に起きる。
二日酔いで頭痛の日もある。
それでも同じ時間に出勤する。それだけであなたは真面目だと思う。
ジェームズ・アラデス・・・
グレンドロナック蒸留所の創始者である彼はとても真面目だった。(元々地主ではあったが・・・)

毎日コツコツ頑張って念願の蒸留所をオープンさせた。
と、ここまではよく聞くサクセスストーリーだ。

彼の作るウイスキーは、たちまち評判となった。
地元の貴族5代目ゴードン公もまたアラデスのウイスキーに魅了された。
ウイスキーだけじゃなくアラデスの人柄も気に入ったゴードン公は彼をロンドンの社交界に誘う。
結果、すっかり華やかな世界にはまってしまった。

アラデスは、ウイスキー造りへの情熱を失ってしまうのだ。
結局、蒸留所は他の人の手に渡ってしまう。

この話を聞いてどう思うであろうか。
ジェームス・アラデスは毎日毎日同じようにウイスキー造りに専念していれば良かったのであろうか。
私はそうは思わない。

何故なら1826年創業以来、なんだかんだでグレンドロナックは銘酒の位置を保っているではないか。
約200年間人々に愛され続けているではないか。
結果はしっかり残っているのだ。

今日も明日も明後日も、コツコツ頑張るのもいい。
だけど時には脱線してみるのもいいかもしれない。
そのまま華やかなほうへ流れてしまってもいいのではないか。

積み重ねた過去が消えることはないのだから・・・。
今夜はグレンドロナックを飲みながらそんなことを思った。

やわらかいイチゴジャムのような香りに癒される。
少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「グレンドロナック12年」。

12年間という数字を長いとみるか短いとみるか。
考えてみるとジェームス・アラデスが蒸留所をオープンさせて人の手に渡るまでの期間がおよそ12年。
基盤がしっかりしていれば、放っておいても銘酒は育つ。
なぜかそんな結論に至った。

毎日頑張るあなたは、今晩グレンドロナックを飲んでみてはいかがだろうか。
きっと、リラックスできるはずだ。

明日は二日酔いかもしれない。
それでも同じ時間に出勤するあなたは真面目だ。
基盤はもう、できている。

Tomomi

バーテンダー。錦糸町の老舗バー「オールドスコット」に勤務して18年。 2007年の第1回ウイスキープロフェッショナル試験に合格。今一番好きなウイスキーは「アードベッグTEN」。