ウィスキーの色について考えてみる

 

現在の店に勤める前の話…、18年前の話だ。
とある飲食店へ面接に行った時のこと、こんな質問を受けた。

「好きなウィスキーは何ですか?」

当時ウィスキーを飲み比べる機会のなかった私は「ウィスキーはどれも同じ味がするので分かりません」と答えたのだ。
聞いたことのある数少ない銘柄の一つを答えていれば良かったのかもしれない。
しかし、「どんなところが好きか?」更にこう質問されたら完全に自爆だ。こればかりは実際に飲んだことのある人にしか答えられない。

ウィスキーが分かりづらくて難しい感じがするのには、見た目の問題もあると思っている。
どれもみんな茶色だから見分けがつきづらい。これは「樽熟成」を行ったことによるもの。茶色は樽の色素成分なのだ。
ウィスキーのキーワードの一つは「樽熟成」である。
香味を決定する要素の半分以上は樽によるものと言われる。ということは、ウィスキーの色もまた重要であるといえる。見た目も大切なのだ。

ウィスキー樽

目を凝らして、よくウィスキーの色を見てみよう。単に「茶色」、だけではないはずだ。
ほんのり、赤、ピンク、オレンジ、黄色、緑などが見えてくるだろう。また、透明な時もあれば、濁って見える時もある。

樽と一言で言っても、元々どのような用途で使われていた樽を使用するかで、色も風味も大きく変わってくる。もちろん、新しい樽を使用することもある。熟成する環境によっても味は左右される。
赤い方が良いとか、透明なほど良いとか、そういった理屈は一切ない。この世に誕生した以上、どれもみんな個性の一つだ。

しかし、見た目だけで全てを判断することはできない。実際に香りを嗅いでじっくり味わってみないと本質には迫れない。
実際にウィスキーを飲んでみて、見た目から連想する風味かどうか確認してみよう。
あなたの推理は当たっているだろうか?

派手な赤茶色のウィスキーであっても、余韻が短いかもしれない。薄茶色で白に近い色でも、奥深さを感じる味わいかもしれない。些細な違いに気づくほど、一杯のウィスキーがより価値あるものとなる。
そして見た目とのギャップが多ければ多いほど、心惹かれるものだ。これもまた真実である。人と同じかもしれない。


今晩はじっくり目の前の一杯と向かい合ってみよう。自分の目でウィスキーをよく見てみよう。
今まで気づかなかった真実に迫れるかもしれない。

Tomomi

バーテンダー。錦糸町の老舗バー「オールドスコット」に勤務して18年。 2007年の第1回ウイスキープロフェッショナル試験に合格。今一番好きなウイスキーは「アードベッグTEN」。