ウイスキーの利き酒。ブラインドテイスティングに求められる感覚。

 

ウイスキーのブラインドテイスティングとは、ボトルやラベルを見ずに
色や香味からグラスに注がれた1杯の銘柄を推理することである。

しかし、ピッタリ当てられることはほとんどない。完璧を求めづらい世界なのだ。
原産国、度数、熟成年数、熟成樽が大体当てられたら相当な味覚の持ち主だ。
前世は警察犬かもしれない。

まず、色を見てから香りを嗅ぐ。そしてゆっくり味わってみる。
そこから予測を立てて2口目、3口目・・・と推理しながら飲み続ける。
推理した通りの解答があると良いのだが・・・。

頭で考えて飲む。ゆっくりゆっくり確認する。
しかしこの確認作業の間に先入観というものの恐ろしさを知ることになる。
過去に飲んできたウイスキーの銘柄に当てはめてみるが、予想通りに事が運ぶことは皆無と言って良い。

私は飲食において刺激のある味を好む。
この刺激物というものは歯止めがきかない。
日々重なる刺激を求めてしまうのだ。例えば、今日は1回の食事にタバスコ一振りで美味しく感じたのに、
明日はもう一振り、その翌日にはもう一振り追加されることはザラにある。

そして1ヵ月後には2日ほどでタバスコ1瓶を使いきってしまう。
心身共に疲れているのか・・・。いや、そんなことはない。
誰だって皆、何かに疲れている。私に自制心がないだけだ。

ウイスキーの世界で最も刺激的と言われる銘柄。それは、スコットランドのアイラ島産のウイスキーだ。

スモーキーな味で、中でも加水していないタイプ「カスクストレングス」と言われるものには注意が必要だ。
刺激物を摂取し続けた私は、ある日自分の味覚が狂ってしまったことに気付いた。
周りの人間が気付く味に気付けなくなってしまった。これは大問題だ。
感覚が鈍いということは、他の人が感知できる感覚を得られないということ。人生を損してしまうだろう。

一度先入観を持ってしまうと途中で引き返すことは勇気がいる。
それまで積み上げた考えが無駄になることが怖く感じる。

しかしこのまま無意味と感じ始めた道を行くほうが間違っている。
思い切って方向転換してしまおう。
間違いに気づくことは、鋭敏な感覚が戻った証拠である。
基本に帰ろう。自分なりの基準をしっかり設けることが大切だ。
人生もブラインドテイスティングも経験がものを言うのだから。

Tomomi

バーテンダー。錦糸町の老舗バー「オールドスコット」に勤務して18年。 2007年の第1回ウイスキープロフェッショナル試験に合格。今一番好きなウイスキーは「アードベッグTEN」。